4444HITおめでとうございます!!茅先輩に捧げる!!
「ジッポ」「キス」でのリクエスト。今回は煙草には噎せない仕様!!
「DEAR」
杉山 結 PRESENTED/YUI SUGIYAMA
 
『親愛なる裏切者へ』
それが、男が私に送った墓碑銘だった。
男の父親の形見わけの時に彼が譲り受けた、使い込まれた銀色のジッポに刻まれたその墓碑銘は今、私の手中にある。

 玄関先に立つ男は、笑えるくらいに似合う黒ずくめの装いで、薄い笑いを浮かべていた。若白髪が増えている。無精髭は出所の時に綺麗に剃ったのだろう。
「預けていた物を、受け取りに来た。」
 挨拶もなしにそう言って、小指の欠けた手を徐に差し出してくる。
きょとりとしている妻を振り返った。娘の名を呼んだ。小学校の中学年。母親の真似をしたがる娘が駆けて来る。
黒ずくめの男のあまり品がいいとは言えない笑顔を見て、私の背後に立ち竦む。
「捨てるのか? 折角積み上げてきた物なのに。」
揶揄の響きを含ませて男が笑う。
「捨てるために、積み上げてきた。」
自分の声とは思えないほど低い声が口から零れていた。
妻が緊張した表情を向けている。娘も体を硬くしているのがわかった。
「受け取りに来たんだろう?」
「そうだが、ここまで立派に堅気の皮を被っているとは思わなかった。」
「これからのためだ。」
戸籍を買い、顔を変え、独特の匂いを消して生きてきた。この男に預かっていた物を返すために。
「返すよ。」
「いいんだろうな。本当に。」
「いいさ。どうせ、俺には似合わない世界だ。」
男がゆっくりと煙草を銜えた。それが、合図。
私はジャケットからジッポを取り出した。私の人生が、再び始まろうとしている。
真鍮の見え始めたジッポを握り締めたまま、一度振り返り娘の頭に手をやった。
「いい、女になれよ。」
泣き出しそうな顔になっているのは、わけがわからないからだろう。くしゃりと顔を歪めた娘の額に、幼い頃してやったようにキスを落とした。
「あなた………?」
放心状態の妻には口唇に口付けてやる。新婚と呼ばれた時期以来、そんな戯れはしていない気がする。妙なくすぐったさや気恥ずかしさはなく、別れの儀式のようなものだった。
「私がいて、いい世界ではないからね。それでも、母娘で食べていけるようにはしてある。」
この女も娘も、カモフラージュにすぎない。そう、言い聞かせた。
「すまなかった。」
背を向けた。平穏な生活に身を浸そうとも、自分は裏の世界でしか生きていけない人間なのだとは思っていた。足音で目を醒まし、ヤクザ者と警察官の見分けが容易につく。抗争事件に敏感になって、喧嘩に一歩踏み込めば我を忘れる。極道の自分は、会話もしたことのない男の名前を名乗りながらしっかりと生きていた。
男の冴え冴えとした視線とぶつかる。この目と、薄ら笑いで3人殺した。組長と右腕になる武闘派ヤクザと、組長の女。トカレフを手に、自分を拾い育ててくれた親父の仇を討ったのだ。
私がジッポの火を差し出した。銜えていた煙草に火が灯る。
「おつとめ、ご苦労様でした。」
「あぁ。」
「手はずは、全て整っています。」
「あぁ。」
「狼煙、あげましょうか。伊佐山組が潰れたと思ってる馬鹿共に、親父の育ててきた連中がどれほど立派に育ってたかをしらしめてやりゃいい。」
法的罪は全てこの男が受けた。私がすることは一つだった。今日のために、全てのお膳立てを揃える事。だから、さっさと姿をくらまし、顔を変え、戸籍を買って、この手と足で資金を稼いだ。法律を学んで、これからに備えた。周囲は消えた幹部を裏切者と罵った。
「行こうか。親父の弔い合戦はまだ終わっちゃいねぇ。」
預かっていたのは私の命が一つ。
私の手が軽くなった。
男が古びたジッポを受け取って、にやりとくちもとを緩めた。
「とんだ組長代行だったな。」
「まったくですよ。」
足が地に着いた。私は私の生きる世界に帰って来たのだ。
呆然と投げかけられる二対の視線にも、明々と灯る家の灯にも、未練はなかった。
半年後、壊滅したはずの伊佐山組は先代の時代と何ら変わらない姿で復活の狼煙を上げた。
 
 

その頃、警視庁捜査四課では………
「おいおい、冗談じゃねぇぞ。」
真一文字に結ばれていた口唇が情ない言葉を吐き出す。
「伊佐山が復活したって? まぁた、あのデコボココンビが顔出してきたのかよ。」
でかい背を椅子に預けて、まだいくらか若い男は嘆息した。
「おい、日高。その伊佐山が早速抗争だってよ。」
「勘弁してくれよ。俺、あのツーカーコンビ嫌いなんだよ。」
「あちらさんも、そう思ってるさ。マル暴の日高には来て欲しくないってな。」
「あっちは、二人だ。片方、頭いいし。」
「行けば、玉露の茶が飲める。」
「それは刑事としての美学がないんじゃないの?」
「いいから行くぞ。こっちはこっちで狼煙を上げてやれ。」
「へーへー、いってきまーす。」




<お詫び>
これはね、あまりに出来が悪すぎる………
「FLY」で力尽きたのかも。
いろいろ話は考えたんだけど、ながーくながーくなりそうなので、短くしようと削りに削ってこんな話し。キスシーンもマジでちょっとだしね。自己嫌悪になりそうなほどこれは駄作だわ。ごめんなさいね。なんか、設定細かくしたら長くなるし、短くしたら登場人物が薄くなるしで………現に薄い男達。そして際立つ日高刑事(息子)。
解説なんて最低な真似をしてみます。
伊佐山組の組長さんが殺されて、黒い男が復讐に突っ走って、相手の組の組長と幹部を殺して捕まります。その間、私は黒い男が出所してきたら何時でも伊佐山組を復活させれるように資金集めに真面目に働くんですな。整形しぃの、戸籍も買いぃので。で、まぁ、普通の人に見えるように家庭も持ちと。んで、出所してきたので、捨てるもん捨てますって話しです!!!はい!!!
………ちーちゃん、もうキリ番取らないで………そして次は他の人にリクエストだしてね。げふぅ(吐血)。
PRESENTED/YUI SUGIYAMA

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